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「学び」へのステップ 大学から始める『言葉の力』育成プログラム
基礎編①(4月26日)を実施いたしました。

2014.05.07

 「大学から始める『言葉の力』育成プログラム」(通称「コトチカ」)の平成26年度の第1回目を、4月26日(土)に実施いたしました。



 「クイズ文」の書き方、質疑応答のノウハウ、司会や書記の心得、そして、大学らしいディスカッションの技術、などなど盛りだくさんの内容だったので、2時間はきっと「あっという間」だったのではないでしょうか。
 コトチカで学んだことをゆっくり消化し、身につけるためには、1回限りのコトチカの参加で終えてしまうのではなく、それらを日々の授業の中で活用し、継続的に実践していく必要があります。ぜひこれからの普段の授業の中で、コトチカで学んだことを活かしていってください。

 さて、基礎編第1回のディスカッションのテーマは「高校の授業科目の中で、学ぶ必要のないものは何か」でした。大学生になって「自分で履修科目を選ぶ」ということに慣れてくると、なぜこの科目を学ぶのか、自分にとってこの科目がどんな意味を持つのか、といったこと考えることも多いでしょう。しかし、ほぼ全員が同じ科目を学ぶ高校までは、そういったことを疑問に感じる機会はそう多くはなかったはずです。そこで改めて、学ぶ意味について振り返って考えてみよう、というのが今回のディスカッションに上記のテーマを選んだ意図のひとつです。
 それでは、それぞれのグループが実際にどんなディスカッションを行ったのか、グループごとに見ていきましょう。まずは「グループ1」から。

【グループ①】


※写真は、クリックすると拡大します

 このグループでは、右上のファシグラがいいですね。議論の構造がうまくとらえられています。「時事」や「心理」について、具体的にどんなものなのかを問う質問があり、それに対してプレゼンターが例を述べて答えた様子がわかります。このように、一直線の羅列ではなく、ネットワーク状に発展するファシグラは見事です。

※ファシグラ…「ファシリテーション・グラフィック」の略。議論の流れやポイントを図式化したもの。

【グループ②】


 このグループでは、右下「倫理はいらない」の議論がユニーク。もっとも、素材がおもしろいだけに、もうひとがんばりして欲しかったな、という欲もでてしまいます。少し根拠に客観性があればイチオシだったなぁ・・・。
 このグループのベストは、右上の「情報いらない」に決定! 赤線、矢印、丸囲みなどを駆使して、議論の構造をわかりやすく示しています。その上、質疑応答の結果、結論が当初と逆になって「逆に増やすべきだ」と変わっているのもおもしろい。質疑応答が議論を深め、質を高めた結果ですね。

【グループ③】


 このグループは、全員が「古文」「漢文」をいらない科目としてあげてしまっていたので、議論がかぶってしまって質疑応答が大変だったでしょうね。実際、とても議論がやりづらそうで、担当者としてちょっと申し訳ない気がしていました。
 そういう訳で、議論があまり活性化せずにファシグラの内容も少なめですが、このグループのベストは左上に決定。「古典の代わりに伝統芸能を学ぶべき」という主張はユニークでおもしろい。ご参観くださった先生から、次のようなコメントも付いています。「落語、浮世絵、庶民文化の歴史を学ぶと新しい歴史がみえてくるのでは?」だそうです。蛇足ですが、私も落語が大好きです。枝雀の「義眼」がお気に入り。
 
【グループ④】


ここは左上、「明治以前の日本史はいらない」がベスト。ご参観くださった先生から、「高校まで:受験のための暗記、社会人:自分を豊かにするためのたのしみ!→教養」というコメントが。中世近世以前よりも、日本の近現代史に絞った方がいい、という主張は重要な指摘をしていると私には思えます。

【グループ⑤】


 右上、右下の矢印の使い方もとてもいいのですが、このグループは左上、「高校のうちから文章を学ぶべき」をベストにしましょう。古典を鑑賞することよりも、自分で文章を書く方が重要だ、という指摘はもっともです。私自身も、古文の文法を学ぶのになぜあれだけ時間を割かなければならなかったのか、今でも疑問がぬぐえないでいますよ・・・。ちなみに、ご参観くださった先生からは、「大人になって読んでみるとおもしろいよ」というコメントをいただいています。本来は、高校でまなんだ古文・漢文のリテラシーは、大人になってから自分で古文や漢文を読んで味わって人生の指針にするために使うべきなのでしょうね。そういう私は、一回もそんなことできていませんが・・・(反省)。

【グループ⑥】


 左下、「情報○」がベスト。議論の構造がわかりやすく可視化され、ネットワーク状の発展性のあるファシグラになっています。また、「よみとり・発信・判断」が重要であるとか、信頼できる情報選択が重要であるといった根拠付けも説得力があります。

【グループ⑦】


 ここはレベルが高いですね!質疑応答のやり取りが密度の濃いものだったことがファシグラから分かります。悩みますが、ベストは右上「(西洋的)科学を少しやめよう」とします。ぱっと見るだけでは主張の意図は分かりにくいですが、ファシグラ全体を見ると、西洋科学的な世界観はものの見方の一部でしかないこと、それを全体だと誤解してしまうと、身近なはずの東洋的な世界が理解しがたいものになってしまうこと、などが主張の意図であることがよく分かります。見事!
 ちなみに、左上には「根拠(賛成)←→質問・意見(反対) わかりやすいネ」、下には「歴史物の本や歴史の本がよく売れている理由は?」「受験のための暗記だけなら不要かもね。海外に出たとき自国の歴史知らないと信頼されないかも?」とそれぞれご参観の先生からコメントをいただいています。

【グループ⑧】


 このグループは右下、「オーラルコミュニケーションがいらない」がベスト。口頭でコミュニケーションをとる能力を向上させるには、まず日本語から、という根拠には説得されました。それから、議論の構造を示すために、丸囲みの記号を使っているアイデアもいいですね。ご参観の先生からも、同様のコメントをいただいています。「丸付きの文字で記号を作るのはいいアイデア」。
 このグループのファシグラはどれも字数が多く、議論も活発に行われたことがうかがわれます。グループの雰囲気もとても楽しそうでした。きっと誰か(あるいはみんな?)雰囲気作りのうまい人がいたのだと思いますが、そういう資質を持った人は、これからもぜひその力をグループみんなのために使って下さい。

【グループ⑨】


 このグループのファシグラも、いずれもレベルが高くまとまっているので悩みます。右上は特に、議論の構造が明確で、質疑のやり取りもしっかり書かれています。ですが、下のものが議論全体の中身がわかりやすく、おもしろいので、これをベストとしましょう。化学は要らない、という主張に対し、実験を通じて人とふれあえるし、人の考え方も学べるのでは?という質問がなされています。この質問が素晴らしい。
 ちなみに、左上には「歴史の授業を楽しい!面白い!」と思ったことはないですか?」「意見をブルーで書くのは見やすいまとめ方!」、右上には「左右に分けてうまい」、下には「見やすくよくまとまっています!」とのコメントがそれぞれご参観の先生方から寄せられています。


 以上を通じた、クラス全体に対する講評は以下の三つです。

1. いらない科目として「漢文」「古文」が多かった→同じような議論が続いてしまったグループは、質疑応答がやりにくかったはず
2. ファシグラの文字が小さめ→最初に思い切って大きな字で書くと勢いが付きます。
3. 主張の根拠として客観的な証拠を挙げる、というのが難しそう→相手にしっかり理解してもらうためにはどんな根拠が必要か、訓練して次第に慣れていって下さい。レポートの核はこの「根拠付け」にあります。
 
 クラス全体のベスト・ファシグラ賞は【グループ2】の右上の方にしましょう。議論の構造、重要部分がわかりやすいように工夫が凝らされているのがその理由です。矢印も、重要度に応じて数パターン使い分けているのも注目です。このファシグラを書いた方は、ぜひ「教育開発支援機構事務課」までお越し下さい。副賞として、「言葉の力育成うちわ」を進呈します。なんと、担当講師の手作りですよ(一部、表現に誇張あり)。

 さて、次回のコトチカは5月17日(土)10:00~12:00に「基礎編②」を実施する予定です。また新たなディスカッションのテーマを用意いたしますので、参加予定の方は楽しみにしていて下さい。

 また、基礎編の次には発展編、総集編、とプログラムを用意しています。基礎編の既受講者にはぜひその先も受講して欲しいと思っていますが、基礎編を受講して「もう少し鍛えたい」と感じたら、2回目、3回目の受講にチャレンジしてみて欲しい、とも考えています。2回目あるいは3回目の基礎編の受講では初めて参加する学生たちを支援することも意識してもらえると、運営側としてとてもうれしく思います。

 それから、もっと細かく質問がしたい、論理的な文章の書き方についてもっと知りたい、自分が書いた文章を読んでほしいという人は、月曜4限と木曜3限にA棟地下1階の教育開発支援機構事務課内の「教育サロン」でお待ちしていますので、お気軽におたずね下さい。

コトチカ担当:須長 一幸

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