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「学び」へのステップ 大学から始める『言葉の力』育成プログラム
基礎編②(5月17日)を実施いたしました。

2014.05.30

  「大学から始める『言葉の力』育成プログラム」(通称「コトチカ」)の平成26年度の第2回目を、5月17日(土)に実施いたしました。




  こんにちは。教育開発支援機構の橋場です。17日の「基礎編②」参加者の皆さん、お疲れ様でした!

 「基礎編②」のクラスでは、大学で必要とされる日本語の形式についてお話をした後、実際にその形式に従った文章を皆さんに作ってもらい、それを踏まえてディスカッションをしてもらいました。盛りだくさんの内容だったので、2時間といえども、あっという間だったのではないかと思います。

 おそらく、参加者の皆さんの多くが「消化不良だな・・・」と感じていたのではないでしょうか?というのも、1回のクラスに参加しただけでは、今回のクラスで取り扱った内容をすべて理解し、実践することは難しいからです。その意味では、たとえ今回のディスカッションでプレゼンテーションや質問、書記がうまくいかなかったとしても、全く問題ありません。また、皆さんには、是非、普段の授業や勉強のなかで、今回学んだことを何度も繰り返し実践し、少しずつ身につけていってもらいたいと思っています。

 さて、基礎編②のディスカッションのテーマは「小さい頃(小学生くらいまでに)やっておくべき習い事とは?」でした。個々人の感覚に基づいて何とでも答えられるような些細なテーマですが、第三者に共有可能な答えとその理由の組み合わせを、どの程度考え出してもらえるかなと思いながら当日の様子をみていました。

 それでは、それぞれのグループが実際にどんなディスカッションを行ったのか、書記の方が書いてくれたファシグラをもとに、グループごとに振り返りましょう。まずは「グループ②」から。(当日は、欠席者の関係で「グループ①」の皆さんには移動してもらいました。)

※ファシグラ…「ファシリテーション・グラフィック」の略。議論の流れやポイントを図式化したもの。

【グループ②】

※写真は、クリックすると拡大します

 このグループでは、「英語教室/英会話」と「スポーツ」に分かれましたね。書記の形式としては、上段に「答え」と「理由」を、下段に質疑の様子を書くという形になっていて、分かりやすいですね。特に見易さでいえば、左上のものが分かりやすいですね。質疑の様子で気になるのは、右上のものです。「外国語のなかでもなぜ英語なのか」という問いに対して「話す人口が多い」という回答があり、それに対して、さらに「中国語も多いけれど?」という質問が投げかけられています。質問への答えに対して、さらに質問を行っていくと、議論は深まっていきます。って、当日を思い返すと、これは僕がした質問だったかも・・・

【グループ③】


 グループ③は、四者四様の書記をしてくれています。印象的なのは左下。学習塾に行くことに関するデメリットが挙げられていますね。自分の主張を展開する際に、主張が完璧なものでなければならないと思っている方もいるかもしれませんが、それは勘違いです。どんな主張にも限界がありますし、逆に「完璧だ!」と言い張られると却って胡散臭く感じるものです。自分の主張が及ぶ範囲や限界を、聞き手に対してきちんと示すことは、説得力を増すことにもつながります。
 
【グループ④】


 グループ④は、意見が割れたようですね。個人的には、ピアノ(左下)をやると感受性が豊かになるので、人間関係が良好になるという幸せな展開には、いろいろと質問したいことがあります!このグループは、質疑応答の様子が書かれていないため、どんな議論になっていたのか分からないのですが、当日は質疑がきちんと展開されていたのであれば良かったですね。是非、今度機会があるときには、質問とそれに対する回答も書き留めてみてください!きっと、議論がますます促進されるはずです!


【グループ⑤】


 グループ⑤は、議論に集中しすぎてしまったのか、書記の分量が全体的に少ないように思います。この記録を見るだけでも、もっともっと掘り下げられそうですね!例えば、サッカー(右上)で、「かっこいい」という点についての具体的な説明として、「いろんなプレー」があることが挙げられていますが、「いろんなプレー」が見られるスポーツは、他にも沢山あるように思われます。そんな些細な質問でも良いので、どんどん投げかけてみてください。そして、グループ④と同様、質疑応答の記録も忘れずに!


【グループ⑥】


 グループ⑥は、「理由・根拠」に番号を振っているのが分かりやすくて良いですね!野球(右下)のところで、「好きな奴がしろ!」というまとめになっていることに笑ってしまいました。「習い事は、役に立つかどうかなんて打算的な理由でやるべきことじゃない!」という、今回のテーマ設定の妥当性に一石を投じる問題提起ですね。ここでちょっと真面目な話。議論をしていると、ついつい細かいところに話の焦点が行ってしまいがちです。だからこそ、今の議論は何のためにしているのか、意味ある議論なのかと、一歩引いて考えてみることも大変重要です。


【グループ⑦】


 グループ⑦は、当日にも振り返りの際にお伝えしましたが、剣道(右上)のプレゼンテーションはとても良かったですね!事前に反論を予想し、さらに再反論を用意するという周到さがありました。当日は、気付きませんでしたが、剣道は勝つことが目的ではないというのは、考えさせられますね。改めて振り返ってみると、それぞれの理由の間に関連性がある場合には線を引いてつなげているなど、書記の方も頑張っていますね。


【グループ⑧】


 グループ⑧は、それぞれのメンバーが理由を沢山挙げてくれているのが良い所だなと思います!これらの理由を巡って、どんな質疑が行われたのかとても気になります。一枚の用紙にすべての議論をまとめてくれているようですね。確かに、最後にお話したように、このクラスを開催するにあたってクリアファイルを節約するなどの経費節減に努めているのですが、次回は一人一枚を贅沢に使って質疑応答も書いてくださいね!

【グループ⑨】


 グループ⑨は、「習字」を選んだメンバーが二人いて、議論が重複するなど、やりにくい部分があったかもしれません。ただ、書記を見た限りでも、同じ「答え」を支える「理由」はちょっと違うことが分かります。どのあたりが違うのかをより鮮明にしていくうえで重要なのは、質疑応答です。より細部へと質問をしていくことで、同じ言葉を使っていても別の意味をそこに込めていたことが分かる、なんていうこともあります。今後、他人と意見が「同じ」になったときには、是非、沢山質問してみてください。「同じ」ことなんて、実際にはほとんどありません。


【グループ⑩】


 グループ⑩は、ユニークな答えが多いですね。それぞれ、どんな理由でこのような答えになったのか、もっと詳しく聞きたかったなと思います。特に印象的なのは、茶道(左下)を習うべき理由として「グローバル化」が挙げられていることです。他のグループでも多々挙げられていたように、グローバル化と聞くと、英語などの外国語習得を想像しがちです。しかし、発想を逆さまにすれば、同じ「理由」が別の「答え」を導き出すことに使えたりするわけです。


【グループ⑪】


 グループ⑪は、「スポーツ」や「楽器」など、あえて範囲を限定していない答えが挙げられているところが特徴ですね。抽象度の高い「答え」や「理由」を説明すると、聞いている側を何となく納得させてしまうことがあります。ですが、例えば「スポーツ」も「楽器」も「協調性を高めると言っているけれど、個人でやるスポーツや楽器もあるんじゃない?」と質問してしまえば、主張の根拠は一発で吹き飛んでしまいます。漠然とした「答え」や「理由」は、突っ込まれにくい様でいて、一度突っ込まれたら主張全体が崩れてしまう可能性があるものだということを頭の片隅に入れておいてください。

【グループ⑫】


 グループ⑫は、野球(右上)のところで、矢印や線を使いながら、それぞれのキーワードの関係性をうまく表現しようと試みているところが良いと思います。今回は、それぞれの関係性が十分に分かりやすく示されるには至っていないところもありますが、次回以降、もっとうまくできるように継続して挑戦してみてください!


 以上、それぞれのグループの書記の様子を振り返ってきましたが、今回は、書記に苦戦していたグループが多かったのではないかと思います。ワークシートには沢山のことが書けていた方ばかりでしたし、質疑は活発に展開されていたとも思いますので、今度は、質疑を書きながら進めていく技術を磨けると良いかと思います。最後に、書記に関することも含め、クラス全体に対する講評を三点にまとめました。

1. 書記は、もっと沢山の情報を書きましょう :クラスのなかでもお話しましたが、質より量です!
2. 質疑応答も含めて書きましょう :議論の内容やプロセスが分かると、その場の議論がもっと盛り上がります!
3.  主観にとどまる内容は根拠にはなりません :「楽しい」などの本人の感情は、他の人には共有不可能(=議論不可能)です!ただ「楽しい」といわれるよりは、「競技人口が多いことから、多くの人が気軽に楽しんでいることが分かる」といわれたほうが、説得力は高まりますね。

 クラス全体のベスト・ファシグラ賞は、グループ②の左上の方にしましょう。特に、理由と質疑応答の様子が区別されて記述されていること、赤線を付すことでキーワードが分かりやすく示されていたことがその理由です。ファシグラを書いた方は、ぜひ「教育開発支援機構事務課」までお越し下さい。副賞として、「言葉の力育成うちわ」を進呈します。なんと、もう一人の講師、須長先生の手作りですよ(一部、表現に誇張あり)。

 さて、次回のコトチカは6月4日(水)16:30~18:30に「基礎編④」を実施する予定です。また新たなディスカッションのテーマを用意いたしますので、参加予定の方は楽しみにしていて下さい。

 また、基礎編の次には発展編、総集編、とプログラムを用意しています。基礎編の既受講者にはぜひその先も受講して欲しいと思っていますが、基礎編を受講して「もう少し鍛えたい」と感じたら、2回目、3回目の受講にチャレンジしてみて欲しい、とも考えています。2回目あるいは3回目の基礎編の受講では初めて参加する学生たちを支援することも意識して、われわれスタッフと一緒にこのプログラムをよりよいものにするのに力を貸してもらえると運営側としてとてもうれしく思います。

 それから、もっと細かく質問がしたい、論理的な文章の書き方についてもっと知りたい、自分が書いた文章を読んでほしいという人は、木曜3限にA棟地下1階の教育開発支援機構事務課内の「教育サロン」でお待ちしていますので、お気軽におたずね下さい。

コトチカ担当:橋場 論

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