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「学び」へのステップ 大学から始める『言葉の力』育成プログラム
基礎編④(6月4日)を実施いたしました。

2014.06.19



  「大学から始める『言葉の力』育成プログラム」、通称「コトチカ」に関心を持って下さったみなさん。こんにちは、担当の須長です。

 6月4日(水)に、実施されたコトチカ基礎編④はいかがだったでしょうか。プロジェクターの調子が悪くて開始がちょっと遅れてしまいましたが、実は私はあのとき、「いざとなったらスライドを使わないでやるしかない!」と悲壮な覚悟を決めかけていたところでした。みなさん、危ないところでしたね(笑)。

 さて、コトチカ基礎編も残りあと二回となりました。「クイズ文」の書き方、質疑応答のノウハウ、司会や書記の心得、そして、大学らしいディスカッションの技術、などなど盛りだくさんの内容ですから、もう少し学びたいと思った方はぜひ二回目にトライしてください。また、プログラムで身につけたことは今後の授業のなかで活用していって欲しいとも思っています。「質問の仕方」など、すぐにでも使えるものはあるはずですよ。

 さて、基礎編④のディスカッションのテーマは「子どもにとって尊敬できる大人とは」でした。知的・情緒的な成長において、モデルになる人がいるかどうかはとても重要なことです。「学ぶ」の語源は「まね(真似)ぶ」、つまり「真似をする」ことだそうですから、誰か参考になる人の真似をすることは、学びの第一歩とも言えるかも知れません。しかし、若者まで含めた広い意味での今の子どもたちにとって、真似したくなる人ってどんな人なのでしょうか。果たして、そもそもそんな人いるのでしょうか。私はちょっと心配しています。なぜなら、どんな人にも欠点はありますし、しかも、情報化が促進され、人の欠点が忘れ去られることなく記録され、いつまでも見えてしまう現代社会においては、手放しで誰かを尊敬する、というのは極めて難しいようにも思えるからです。そう考えると、今はかつてないほど学ぶことの必要性が謳われているにもかかわらず、ある意味で学ぶことが難しい社会だ、とも言えるかもしれません。
 そういった現状を、学びの中心にいるみなさんに考えてみて欲しい、というのが上記のテーマを選んだ理由です。もっとも、「尊敬」というと少しかしこまった感じがしてあまりアイデアが浮かばないおそれがあります。そこで、「理想の上司」や「影響力のある芸能人」、「子どもたちがなりたい職業」などの資料を用意し、「尊敬」という概念をできるだけ具体的に考えてもらいました。

 それでは、それぞれのグループが実際にどんなディスカッションを行ったのか、グループごとに見ていきましょう。まずは「グループ1」から。


【グループ1】

※写真は、クリックすると拡大します

 このグループのファシグラ、右上と左下の字がとても似ていますが、これは別人が書いたんですよね…?そういう前提で進めますよ(笑)。似てはいますが、比べると右上の方に軍配が上がりそうです。「活力UP」の後の上向き矢印など、議論を活性化するための雰囲気づくりも上手ですし、コミュニケーションを通じた地域の活性化、というテーマ自体、おそらく今の日本の諸地域で必要な大きな課題ですから、議論のポイントは明確で具体的です。というわけで、このグループのベストは右上に決定。

 ※ファシグラ…「ファシリテーション・グラフィック」の略。議論の流れやポイントを図式化したもの。

【グループ2】

 このグループは、右上のファシグラの記述量が多くていいですね。善悪の基準がはっきりしている、ということが子どもにどんな影響を与えるのか、が説得的に書かれています。これをベストということにしましょう。ただ全体的に、このグループはQ&Aが書かれていないので、質疑応答によって議論がどう深まっていったか、が今一つ可視化されていないのが残念。どんな発言でも、スルーせずにキーワードだけでも書き残していくと、発言した方は「聞いてもらった、受け止めてもらった」という気持ちになるものです。そうすると、それがさらに別の発言を促して、議論を活性化させていきます。書記は大変な重労働ですが、ぜひそれを意識して頑張ってみてください。

【グループ3】

 このグループのファシグラは、なんだかどれも元気でダイナミックです。そして、いずれも具体例を複数挙げるなど、具体性を高めようと意識して努力した跡が見られます。なかでも議論の深まりが一番はっきり見えるのは、右上のファシグラです。子どもはもともと知識も経験もなく、受け身になりがちだから、大人が積極的に信念をもって行動していく姿勢を見せていくことで、子どもの能動性を引き出し、育てていく、といった趣旨の議論が最後に書かれています。短時間のディスカッションで、ここまで深めるのは見事ですね。これをベストとします。

【グループ4】

 このグループはどれもテーマが独創的で面白いです。左上、目標に向かって頑張るだけではなく、実現することが大事なのだ、という主張は大胆ですし、右上、他者を認めることが大事なのだ、という主張はなかなか深いです。右下、「ヒーローのような人」というテーマもこれまた大胆なのですが、ファシグラに書かれた「日本的道徳(人のものをとったりしない)」というのが謎めいていていいですね。日本的道徳を具現化したヒーローって、具体的にどんな人なんでしょうか。なんだか地味すぎてあんまりヒーローっぽくないような…(笑)。ちなみに私は、半沢直樹は「日本的道徳(人のものをとったりしない)」というのとは違うように思うのですが、どうなのでしょうかね(笑)。このグループのベストは左上とします。囲い、下線による重要箇所の強調がうまく効いています。


 さて、以上の各グループの分析を通じたクラス全体に対する講評は、今回は以下の二つになります。

1.書記はもう少し記述の量を増やす必要あり。特にQ&Aの部分が今回はあまり書かれていませんでした。書かないと議論が十分に成熟しないままあっさり終わってしまうことが多くなります。議論のスピードを適切に減速し、ペースを保つためにも、要所要所で書く時間をとることは重要です。


2.議論の内容として、子どもが尊敬できる大人、というのはどうやら次の三つのタイプに分かれるようでした。

(1)信念や目的をもって努力するタイプ(憧憬の対象)
(2)子どもを理解し、受け入れようとするタイプ(包容力)
(3)善悪の基準をしっかり示してくれるタイプ(規範・指針)


 みなさんが大人になったとき、自分がそれぞれどのタイプになれそうか、考えてみても面白いかもしれません。ちなみに私自身は…、う~ん、あえて言えば(2)でしょうか。あえて言いすぎでしょうかね(笑)。

 クラス全体のベスト・ファシグラ賞は【グループ1】の右上の方にしましょう。ファシグラを通じて議論を活性化させようという姿勢が伝わってくる、というのが理由です。このファシグラを書いた方は、ぜひ「教育開発支援機構事務課」までお越し下さい。副賞として、「言葉の力育成うちわ(通称「ことちわ」)」を進呈します。もはやおなじみになってしまいましたが(ほんと(笑)?)、担当講師の手作りですよ(一部、表現に誇張あり)。

 また、7月12日(土)10:00-12:00に開催いたします『総集編』の受付も開始いたしました。『総集編』では、「より深く考えるための「問い」の立て方」と 「具体的に問いを立て、ツッコミを入れながら議論を吟味する技術」 を身につけることを目標とし、『基礎編』『発展編』よりもさらに発展的なグループディスカッションを行う予定です。また、希望者にはレポートの講評等も行う予定です。
 お申し込みは、教育開発支援機構事務課(A棟地下1階)にて受け付けておりますので、興味のある方は、是非ご参加ください。

コトチカ担当:須長 一幸

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