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「学び」へのステップ 大学から始める『言葉の力』育成プログラム
基礎編⑤(6月14日)を実施いたしました。

2014.07.09



  「大学から始める『言葉の力』育成プログラム」、通称「コトチカ」に関心を持って下さったみなさん。こんにちは、担当の須長です。
 6月14日(土)に、実施されたコトチカ基礎編⑤はいかがだったでしょうか。今回は取材の方々が来てらしたので、ちょっと緊張したんじゃないでしょうかね。実は私は結構取材慣れしているのですが(本当です(笑))、やはりカメラをじ~っと構えられながら話すのはずいぶんと照れくさくて参りました。今回の取材は、いったいどんな内容の記事になるのでしょうか。楽しみですね。

 さて、コトチカ基礎編も今回を含めて残り二回。基礎編を受講した後で発展編にステップアップしてもらう、という流れを当初こちら側は想定していたのですが、基礎編を複数回受講してくれる学生さんたちも、回を重ねて少しずつ増えてきました。「クイズ文」の書き方、質疑応答のノウハウ、司会や書記の心得、そして、大学らしいディスカッションの技術、などなど基礎編は盛りだくさんの内容ですが、複数回目の受講者たちがきびきびとグループのディスカッションをリードしてくれているので、終盤に来て議論のレベルもぐっと深まっているように見えます。

 基礎編⑤のディスカッションのテーマは「高校の授業と大学の授業の違い」でした。大学一年目の第一学期での学習状況は、その後の四年間の学習に大きな影響があると言われていますが、私が把握する限りでは、実は一年生たちは大学の授業の高校との違いを漠然とは理解しているものの、自分たちがこれから大学の授業で成長していくためにどんな工夫や努力が必要なのか、詳しいところまではあまり理解してはいないようです。たとえばパワーポイント型の授業でどうやって学習すればよいのか、よく分からないままなんとなく90分を過ごし、なんとなく単位をとってしまう(「なんとなく」で単位がとれてしまうのは、学生ではなく大学側の問題なのですが・・・)。しかし私は、単に「単位を取る」という守りの姿勢ではなく、授業を通じて自分の知的な成長をはかる、という攻めの姿勢で学生たちには授業を受けて欲しいと思っています。そうしないと、四年間はあっという間ですから。でも、そうだとすると具体的に大学の授業で何をどうすればいいのでしょう。そんなことを議論して欲しくて、上記のテーマを選びました。

 それでは、それぞれのグループが実際にどんなディスカッションを行ったのか、グループごとに見ていきましょう。まずは「グループ1」から(いくつかのグループは欠席が生じたためグループを再編成したことで他のグループと合併しています)。

【グループ1】

※写真は、クリックすると拡大します

 このグループでは、一番右と右から二番目で「目的意識」について議論されています。確かに目的意識がないと、大学では授業の海におぼれてしまいますよね。しかし、どうやって目的意識を育てるのか、というのは難問です。そこで左から二番目のファシグラですが、ここには「自分にあった先生を見つける」というヒントが書かれています。これをこのグループのベストとしましょう。
 ところで、「自分にあった先生」とはどういう先生のことなのでしょうかね。たとえば自分一人でなんでもやろうとするのではなく、相談できたり、知的刺激を与えてくれたり、時に鏡になって自分自身のことを教えてくれたりするような人のことでしょうか。そんな「先生」を、ぜひ福大で見つけて欲しいと私は思っています。「先生」は、文字通り大学の教員である必要はなくて、先輩でも、同級生でも、なんでも構いません。ただ、せっかくだから大学教員とも仲良くなってみたいな、と思ったなら、A棟地下1Fにある教育サロンに足を運んでくれると私は嬉しいです。面白い先生がたくさんいますから、ぜひ気軽に話しかけてみてください。そこで、自分なりの「先生」や「師匠」を見つけてくれたら、大学生活もきっともっと楽しくなるんじゃないかと思いますよ。

※ファシグラ…「ファシリテーション・グラフィック」の略。議論の流れやポイントを図式化したもの。

【グループ2】

 このグループでは、左から三番目のファシグラの記述量が多いですね。そして実際、私はこの議論がなされたときに側で見ていたのですが、質疑応答を通じて議論が深まり、新たなアイデアがでてくるような生産的な場になっていました。高校の授業における「受験」に相当するような明確なモチベーションは、大学の授業においてはなかなか持ちにくいため、受講者全てにとってもっと意義のある授業が大学でも必要だ、というのがここでの意見です。では、どんな授業がそれにあたるのか。たとえば自分自身や将来というのは全ての人間にとって意味のあるものなのだから、「受講者全てにとって意義のある」授業とは、自分自身や自分の将来について考えるような授業、具体的には「キャリアプラン(自己分析)」などはどうだろうか。以上がここでの議論で提案された結論です。この左から三番目のファシグラを、このグループのベストにしましょう。

【グループ3】
 欠席者の関係で別のグループに移動してもらいました。

【グループ4】

 このグループは、大学における「自主性」に議論が集中したようで、ほとんどが大学の授業では自主性が必要だ、という論旨が軸になっています。こっそり本音を言うと、実は私自身は大学というのは思ったよりも自主性を重要視しておらず、それどころかいろいろなルールや制約は高校よりも多いとすら思っているのですが(しかも、そのルールが高校のように明示されていない分、大学の方がかえってタチが悪い)、それはさておき。一番左のファシグラは、「自主性」ではなく、授業が一方方向かそうではないか、という観点でまとめられています。高校の授業は、時間内に効率よく、国が定めた内容をこなさなければなりませんので、授業中に質問して進行を止めてしまうことは歓迎されません。しかしもともと、人の理解力には差があるし、疑問を感じる点や箇所も違います。個性尊重の教育を謳うなら、個々人の異なる理解のありようも反映した授業作りをしてほしいですよね。
 もっとも、大学の授業の全てが双方向的で自由な作りになっているとは限りません。そういう授業がまだまだ少ない、と言ってもいいかもしれません。しかし個人的にはそういう授業がこれからさらに増えて欲しいとは思っています。このファシグラ(一番左)を、このグループのベストとします。

【グループ5】

 ファシグラとしては、Q&Aの記述量も含めて充実した一番左のものがベストです(決定!)。「探求心が必要」という結論も、独自性と新鮮みがあり、ユニークですね。
しかし、左から三番目のファシグラの質疑応答も深くて興味深いので紹介しておきましょう。大学の授業で「めげそうなときどう対処?」という質問に対しての回答は、「他人のがんばっている姿を見て奮起する」。大学で「やりたいことはどうやって見つける?」に対しては「いろんな学部学科の人と交流を深める」という回答。福岡大学には二万人の学生がいます。本や授業や先生から学ぶだけでなく、ぜひ身近な学生に刺激を受け、学友を作って欲しいと私は思っています(かくいう私自身は、大学4年間で友だちは二人くらいしか作れませんでしたが(笑))。身近な学生に学ぶ、という学びのチャンネルを、ぜひ豊かにしていって下さい。それが可能だということが、他にはない福大の強みだと思いますよ。

【グループ6】
 欠席者の関係で別のグループに移動してもらいました。

【グループ7】

 このグループでは、一番左と左から三番目で、「学部を超えたいろんな人と接する」ことの重要性が議論されたようです。私は大学教員になって、「他学部の学生たちと交流してみたい」と感じている学生がとても多いことに気が付きました。しかし大学教員の多くは、そういう学生たちのニーズも、そして、そもそもなぜ多くの学生がそれを望んでいるのか、という理由も、よく分かっていないように思われます(ちなみに私は、学生たちが学部間交流を望む理由は少なくとも二つの理由があると考えています。私の回答に興味がある人はぜひ直接聞きに来てください)。さて、このグループではどうして学部間交流は魅力的なのか、についても議論ができたりしたのでしょうかね。
 ファシグラとして良くできていて、議論の内容も興味深いのは一番右、「自分の意見を持って授業に臨もう」です。ただ漫然と授業を聞くだけでなく、自分の意見を持ち、それを授業で提示される問題や回答にぶつけながら授業中に考えることができれば、思考の質と量は格段に上がるはず。高校ではあまり実践したり学んだりする機会はないと思いますが、大学では主張に「反論する」ことも大事です。しかも、誰かや何かに反論するとなるとそれなりの覚悟がいるので、しっかり図書館などで調べて論拠を固める必要も出てきます。そういう意味で、90分の授業での学習を深めるために「自分の意見を持って授業に臨む」というのは素晴らしい策だと思います。このファシグラを、ベストとしましょう。


 さて、以上の各グループの分析を通じたクラス全体に対する講評は、今回は以下の二つになります。

1.議論の内容が、少し型どおりになってしまったかもしれません。大学は自由で、自己責任や自己管理が求められる、という内容が多かったです。それは確かにそうなのですが、例えばそうした責任能力はどうやって身につければいいのか、とか、スピーディーなパワーポイント型の授業を、責任能力や管理能力だけでうまく受講できるようになれるのか、など、掘り下げればさらに深いレベルの議論ができたのではないかなぁ、とも思えます。


2.みなさんの議論に対する「講評」というより「雑感」といった感じになってしまうかも知れませんが、福大生にとって自分たちの関心を広げるための一つの鍵は、人とのつながりやネットワークのようだという印象を受けました。大学は刺激に満ちていますが、そうした刺激を受けるためのアンテナを閉じてしまってはあまり意味がありません。人や自分に関心を持ち、それらから刺激を受け、目的意識やモチベーションを育てていく。みなさんの議論のめざす方向性を大まかに表現すると、そのようになるかも知れませんね。


 クラス全体のベスト・ファシグラ賞は【グループ2】の左から三番目の方にしましょう。記述量、囲みやアンダーラインによる重要箇所の明示、矢印による関係性の表現も素晴らしく、また、質疑応答を通じて深まった議論が具体的な提案にまで到達している点は高く評価できます。このファシグラを書いた方は、ぜひ「教育開発支援機構事務課」までお越し下さい。副賞として、恒例の「言葉の力育成うちわ(通称「ことちわ」)」を進呈します。ことちわ、まさにこれから試験対策に必須のアイテムですね(一部、表現に大幅な誇張あり・・・)。

コトチカ担当:須長 一幸

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