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「学び」へのステップ 大学から始める『言葉の力』育成プログラム
発展編②(5月16日)を実施いたしました。

2015.06.04



  平成27年度第二回目のコトチカ(発展編)を実施しました。発展編は、基礎編で学んだグループワークの技法をさらに活用し、テキストを読む、まとめる、発表する、質疑応答する、といった複合的なワークを行うプログラムになっています。基礎編よりもグループワークが占める時間が多く、その分チームワークも大きな鍵になってきます。
テキストは、人文系、社会系、自然系のさまざまなテキストの中からグループで一つを選びます。今回は、社会系の「友だち関係」をテーマにした『友だち地獄』を扱ってくれた①グループのまとめを講評いたします。



※写真は、クリックすると拡大します

 『友だち地獄 ―「空気を読む」世代のサバイバル』(ちくま新書、2007年)の著者は社会学者の土井隆義です。本書で筆者は、お互いを察しあい、傷つけないように配慮し合うような関係を「優しい関係」と呼び、それが生むひずみについて論じています。

 学校生活を送る生徒たちにとって、「優しい関係」は、ファシグラ左上にまとめられているように、「ぼかし表現」という言葉遣いに現れます。「ぼかし表現」を多用した結果、衝突は生じなくなるものの、逆にまともな接点も生じなくなってしまい、生徒たちの思惑のずれがどうしても広がっていきやすくなる。
 このように、傷つくこと、傷つけることを過剰に恐れてコミュニケーションがまともに機能しなくなったような状況では、相互理解が十分に得られず、ストレスが生じます。そのストレスを回避するためにおきるのが、「いじめ」であると筆者は言います。
 ただ、①グループがまとめてくれたように(ファシグラ下部)、このような状況下でおこる現代的な「いじめ」は、それまでのいじめとは違った性格を持ちます。多くの無関心層がおり、いじめ自体も不明瞭。いじめる対象も、いじめられる対象も、ほんのわずかなきっかけや些細な違いによって生じたり、また、対象がかわったりもする。

 以上の論点を、①グループは流れと関係がわかりやすくなるよううまくまとめてくれました。さて、こうしてまとめられた筆者の見解に、①グループのみなさんはどう考えるのでしょうか。班としての意見はファシグラには書かれてはいませんが、個人的にはとても興味のあるところです。もし筆者が正しければ、いじめというものは「全体がうまくいかなくなる」ことを避けるための局所的な悲劇である、ということになります。逆に考えるならば、局所的ないじめを防止するだけでは問題は解決せず、ともすれば全体のコミュニケーションを破綻させてしまうことにつながる恐れがある、ということでもあるのかも知れません。だとすれば、いじめ問題を解決するためには、問題をどこに設定し、何を目指せばいいのか。問題の根は深い部分に位置しています。

 ちなみに、筆者の土井隆義は子どもたちの「つながり」や「個性」についても本を書いています。『キャラ化する/される子どもたち ―排除型社会における新たな人間像』(岩波ブックレット、2009年)、『つながりを煽られる子どもたち ―ネット依存といじめ問題を考える』(岩波ブックレット、2014年)は短くて薄いのですぐ読めます。お勧めです。

 さて、講評は以上です。『友だち地獄』、面白いのでぜひ手にとって見てみて下さい。教育サロン(A棟地下1階)にも、本を展示しておきます。興味のある方は、ぜひ立ち寄って現物に触れてみて下さい。

コトチカ担当:須長一幸

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