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「学び」へのステップ 大学から始める『言葉の力』育成プログラム
発展編③(6月13日)を実施いたしました。

2015.06.25




  平成27年度三回目のコトチカ【発展編】を実施しました。発展編では、基礎編で学んだ「クイズ文」の形式やグループワークの技法をさらに活用し、テキストを読む、まとめる、発表する、質疑応答する、といった複合的なワークを行います。基礎編よりもグループワークの占める時間が多く、その分チームワークも大きな鍵となります。

 対象とするテキストは、人文系、社会系、自然系のさまざまなテキストの中からグループで一つを選びます。今回は、「使える英語の学び方」をテーマにした人文系テキスト『日本人はなぜ英語ができないのか』を扱ってくれたグループ2のまとめを講評します。発展編では、議論を「収束」する(まとめる)方法として「KJ法」を学習しましたが、グループ2では、KJ法で重要な、グループ化、ラベル付け、関係構築がわかりやすく行われていました。


※写真は、クリックすると拡大します

 鈴木孝夫著『日本人はなぜ英語ができないのか』(岩波新書、1999年)では、明治時代以降引き継がれている現在の学校英語教育の非効率性を批判し、「発信型」英語教育への転換を主張しています。なかでも、英語教育の目的の一つとされる「国際理解」に関し、それをやめようという主張は刺激的です。ただし著者は、過去の英語教育を一方的に批判するのではありません。英語を導入し始めた明治時代以降に行われてきた英語教育は、当時の社会状況や求められていたことから考えれば適切であったと著者は述べています。しかし、状況が変化した現在においては、求められるものも変化したのであり、英語教育に関しても発想の転換が必要だと論じます。著者は、外国の情報を受信するための英語教育から、日本のよさを発信するための英語教育へと転換すべきだと主張しています。

 グループ2は、過去の英語教育とこれからの英語教育とを“グループ化”し、それぞれに「昔:海外の知識を取り入れる」、「今:発信する英語へ」という“ラベル”を付けています。さらに、それぞれのグループの横には、各々の英語教育が必要とされる(された)理由について「why?」と記して説明が加えられています。そして、両グループは「対立」の関係にあるとともに、左グループから右グループへ「移行すべき」として、“関係構築”がなされています。このように、KJ法によるテキストのまとめが適切にわかりやすく行われることによって、筆者の主張をメンバー各々が明瞭に把握できたのではないかと思います。

 テキストを読むという行為は、一人で行うものであると思いがちかもしれません。もちろん、まずは一人で読んでみなければならないでしょう。しかし、今回のワークで行ったように、読んだテキストに対して人と議論することにより、いっそうよく、多角的に理解を深めることができます。そして、テキストの理解が深まるということは、テキストの内容について疑問も生じてくるということです。そのような疑問をもって、テキストをさらに読み進めてほしいと思います。

 講評で取り上げた『日本人はなぜ英語ができないのか』は刺激的な本ですので、ぜひ図書館で手にとって見てください。教育サロン(A棟地下1階)にも、本を展示しておきます。興味のある方は、ぜひ立ち寄って現物に触れてみてください。

特別講師:實渊洋次

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