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「学び」へのステップ 大学から始める『言葉の力』育成プログラム
発展編①(5月28日)を実施いたしました。

2016.06.29



  平成28年度第一回目のコトチカ(発展編)を実施しました。発展編は、基礎編で学んだグループワークの技法をさらに活用し、テキストを読む、まとめる、発表する、質疑応答する、といった複合的なワークを行うプログラムになっています。

 テキストは、新聞記事を八篇集めたテキスト集のなかから、一人それぞれ二篇ずつえらびます。そして、まず自分が読んだテキスト二篇のうち一篇について、内容をまとめてグループメンバーに発表します。テキストの内容は、①「ワークライフバランスについて」、②「高校のデモ参加の届け出制について」、③「若者とスマホの関係について」、④「少年法について」、⑤「18歳選挙権に関する各国の状況について」、⑥「ぼっち席について」、⑦「さとり世代について」、⑧「九大での入学式について」と多様ですが、実はこれらのテキストはすべて、「若者と社会の関わり」という大きなテーマでつながっています。

 さて、発展編では自分が担当したテキストをグループで発表した後、テキストの内容を根拠資料として使いながら、「選挙権年齢の18歳への引き下げは意味があるか」というテーマでシートを作成します。個人個人でシートを作った基礎編と違い、発展編ではグループで議論しながら一つにまとめる、という作業が必要になるのですが、観点や方向性の異なるさまざまな意見を集約して一つにまとめるのは、実は司会にとってはとても大変です。20分という短時間の中で意見をどう引き出し、どうまとめていくか。基礎編で培った技術を駆使しつつ、メンバー同士で協力的な雰囲気を作らないと、なかなかうまくいかないはずです。その意味では、今回参加してくれた6つのグループは、いずれも大健闘してくれました。

ここでは、5グループが作ってくれたシートについて解説することにします。


※写真は、クリックすると拡大します



 5グループでは、選挙権年齢の引き下げについて「意味がない」というちょっと過激な主張をし、その理由を、今の若者は政治に興味を持っておらず、国もその状況を改善する策を持てていないので、若者たちが主体的に政治に参加することが期待できない、という点に求めています。そして、せっかく選挙権年齢を引き下げても、投票率が上がることは見込めず、したがって引き下げは効果をもたらさらない、と予測しています。

 ちなみに、根拠2「国が具体的な策を持っていない」の具体的内容が書かれていませんが、テキスト⑤を読む限り、そこに書かれているドイツ、イギリス、スウェーデンなどに比べると確かに我が国は遅れていると言わざるを得ません(もっとも日本でも、国ではなく地方が個別に対策を講じている例は述べられています)。政治参加を促すための教育は「シチズンシップ教育」と言われますが、日本のシチズンシップ教育はまだ緒に就いたばかりですので、今回の選挙権年齢引き下げをきっかけに浸透していくことを期待したいものです。

 根拠4「投票率の高い年代の人から世間話をしない」という文章は意味がちょっと分かりづらいのですが、若者が家庭や地域のなかで、両親世代の人たちを相手に、社会の在り方や、政治の在り方について議論したり、意見を交わしたりすることが少ない、ということでしょうか。もしそうなら、これは本来なら公的な話題であるはずの政治が、個人個人の私的(プライベート)な考えや決定にゆだねられている、といういわば「ねじれ」を指摘するとても興味深い論点です。だからこそ、せっかく面白い論点なのだから、もうちょっとわかりやすく説明しないと伝わらないのでもったいないですね。

 さて、根拠1と根拠4が少し説明不足な感がありますが、全体としては議論の説得力、「主張―根拠」の関係の適切さ、いずれもよくできています。また、国としての対策を求める結論もいいですね。短時間でこれだけまとめられたのは素晴らしい。グループとしてのまとまりも見事です。

 さて、講評は以上です。今回の発展編で実践してみたように、テキストはただ読むだけでなく、それについて話して、意見交換することで理解が深まったり、あらたな視点を得たりできること請け合いです。ゼミなどの機会では、ぜひ積極的な意見交換を心がけてみてください。
 
コトチカ担当:須長 一幸

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