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「学び」へのステップ 大学から始める『言葉の力』育成プログラム
基礎編⑥(6月18日)を実施いたしました。

2016.07.27




  平成28年度第6回目のコトチカ(基礎編)を実施しました。基礎編では、大学での学習に必要な日本語の形式と、グループで学習するための技術を学び、実際にグループで質疑応答のディスカッションを行うことがプログラムの中心になっています。

 今回のディスカッションのテーマ(問い)は、「今の子どもたち(含む 若者)にとって尊敬できる大人とは?」でした。変化が激しく予測困難な現代においては、大人たちの過去の経験を子どもや若者たちの体験に活かすことが難しくなっています。例えば、大学の教員が学生から就活の相談をされても、学生が志望している会社の名前すら知らないことが増えています。多くの会社が分社化や吸収合併を繰り返しているからです。その場合は、学生と一緒になって調べものをして勉強するしかありません。なんだか頼りないですね。

 では、子どもや若者たちはどんな大人を頼りに、あるいは目標にすればよいのでしょうか。すなわち、子どもや若者にとって「尊敬できる大人」とはどのような大人なのでしょうか。実際に、受講生が考えた尊敬できる大人像(主張(答え))から見ていきましょう。

 まず、その人自身の仕事や困難との向き合い方に関する事柄と、その人の他の人に対する接し方に関する事柄に大別することができました。それぞれの具体例は次の通りでした。

【A:自身の仕事や困難との向き合い方】
1.自分の考えを持ち、自信をもって目標にまっすぐ進む人
2.自分にはない個性や高い能力を持っている人
3.自主性や向上心が強く、行動力がある人

【B:他の人に対する接し方】
1.子供や若者に一生懸命に何かを伝えようとする、あるいは真剣に注意ができる人
2.他人に気配りができ、自分より相手のことを考える人
3.他者の困難を理解して受け止め、周囲に大きな貢献ができる人

 周囲の変化に対してもぶれることのない力強い人間像と、皆の困難に対して一緒に取り組んでくれる心の広い人間像と、対照的にも思えます。

 続いて、なぜ、その主張(答え)が導かれるのか、その根拠をグループで考えていただきました。「その尊敬できる人には何ができる?」、「その人がそばにいると、何かいいことがある?」と自問自答したり、メンバーの主張に問いかけたりすることになりますね。あるいは逆向きに、「その尊敬できる人は、なぜそうなのか?」、「どうすればそういう人になれるのか?」と言う問いを連鎖させても面白そうです。
 A,Bそれぞれから一つずつ、グループで行われたディスカッションのファシグラ(「ファシリテーション・グラフィック」の略称で、こうした板書のことを言います))を紹介しましょう。

 Aタイプの例の主張(答え)は「アイデンティティ(自分、オリジナリティ)があり、継続できる人」です。


※写真は、クリックすると拡大します

 このファシグラでは、「どうすればそういう人になれるのか?」と問いかけが始まったようですね。アイデンティティを持つためには、自信が必要。自信を持つためには、自分の考えと努力が必要。ここで、問いの向きが変わります。「その尊敬できる人には何ができる?」自分の考えを持つことにより、個性を重視するようになる。個性を重視することにより、相手も大切にできる。すごい、Bの主張が出てきました。もう少し、答えと根拠という関係に着目して整理すると下図のようになりますね。



 Bタイプの例の主張(答え)は「子供の前で、あるいは子供に、きちんと注意ができる人」です。


 Bタイプの例の主張(答え)は「子供の前で、あるいは子供に、きちんと注意ができる人」です。このファシグラでは、「その尊敬できる人には何ができる?」の問いかけから始まったようですね。子供の前で注意することによって、子供が大切に思われていると感じる。子供が大切に思われていると感じることによって、大人との距離が近づく。大人との距離が近づくことによって、子供が大人を頼れるようになる。このグループでも最後に、問いかけの向きを変えたようです。「どうすればそういう人になれるのか?」子供の前で注意するためには、ものごとに一生懸命取り組む姿勢が必要。すごい、Aの主張が出てきました。答えと根拠という関係に着目して再整理すると下図のようになりますね。



 答えと根拠を連鎖させるためには、テーマに沿って上手に自問自答する質問を設定することが重要です。自問自答ができるようになると、その質問をそのまま相手の主張にも問いかけることができますから、質問ができるようになります。その質問が、答えから根拠を導く質問なのか、根拠から答えを導く質問なのかは、時々わからなくなりますが、経験を積めばすぐに慣れます。繰り返し練習しましょう。

 最後に、「就活生と一緒になって調べものをして勉強する」大学教員の姿は、頼りないのではなく、尊敬してもらえる姿かもしれませんね!(自己満足でしょうか?)

特別講師:鶴田直之

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